自信過剰は、われわれが必要なリスクをとるための原動力となってくれる面もあるだろうが(カーネマン氏はこれを「資本主義のエンジン」と呼んでいる)、基本的には、危険な(そして高くつく)幻想でしかないのだ。人間は自分を、
プロメテウス[ギリシア神話の神。名前は「先見の明を持つ者」を意味する]の民であり、理性という特別な力を授かっていると思いたがる。しかし、カーネマン氏の簡単な実験が明らかにしたように、人間の思考は理性的というにはほど遠く、習慣に頼ってばかりで、しかもそれはほとんどの場合、われわれを誤った方向へと導いている。
さらに厄介なのは、このような習性は事実上、修正不可能ということだ。カーネマン氏自身、次のように認めている。「私の直感的思考も、やはり自信過剰や極端な予測、計画錯誤[planning fallacy:時間や予算といった計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向]といった傾向をもっており、それは、私がこれらの問題を研究する前と変わっていない」
つまりわれわれは、つまずく原因を知っていてもなお、転んでしまうようにできているのだ。